皮肉

大学院時代の先輩が数年前に既に亡くなっていたことを知った。
職場からスクーターで帰宅途中に事故死されたらしい。


研究職は不安定で将来が不安だという理由から、先輩は研究室には残らずに安定した公務員を選択した。
そしてその安定した職場で先輩は将来をなくしてしまった。


こんなことになるのなら、先輩はもっと羽目を外して生きてもよかったのにと思う。
好きな研究に邁進していれば、職場からの帰路で死んでしまうことはなかったのだから。
もちろん「事故死するかもしれないから将来の計画なんて立てずに行動しろ」と言いたいわけではない。
全ての偶然を考慮して将来を考えることなんて不可能なのだから、私の思いはただの言いがかりに過ぎない。


ただ私は悔しいのである。そして同時に恐ろしいのである。
好きなことをする対価に安定を求めたのに、先輩は好きなことも安定も命さえもなくしてしまった。
こんな皮肉なことが先輩に起きたことが悔しい。
こんな皮肉なことが私を含めて誰の身にも起こりうることが恐ろしい。


こういう時は上辺だけでなく心の底から、いつ終わってもいいような生き方とは何かを考えてしまう。