無意味な国際競争力論議

国の国際競争力を高めて、貿易黒字を出せる強国を目指そう。
そんな意味不明なスローガンを掲げる人は多い。


彼らは貿易黒字がどのようにして生まれるか理解していないのである。
貿易黒字とは、国内の貯蓄率と国内の投資率の差額である。
つまり日本のように不景気で国民が物を買わずお金を貯蓄に回して節約し、企業が設備投資を控えて生産力が下降していると、貯蓄率が上昇し、投資率が下がるので貿易黒字が増加する。


つまり不景気のどん底に沈んだ弱小国でも立派な「貿易黒字を出せる強国」になってしまうのである。
そんなものを目指すことに何の意味もないことは自明であろう。
貿易を論じる際には、この点を理解していないと、とたんに議論は見当はずれなものになる。


中国の貿易黒字を論じる際にも、「このまま中国が貿易黒字を出し続けると、国際競争力の高い強国になる」という論調で議論を展開する人が後を絶たない。
確かに中国の貿易黒字には論じるべき問題が多くあるが、その中に決して「国際競争力」は含まれてはいないのである。


これから人民元論争を勉強しながら紹介しようと思っているのだが、その前にこのことだけはしっかりと述べておきたく思う。