NHK高校教育講座「地理」におけるEUユーロ普及の解説に対する疑問

NHKの高校教育講座で「ヨーロッパ(1) 〜EU 統合のゆくえ〜」を見た。
そこではユーロについて以下のように解説していた。


EU加盟国の中にはイギリスやデンマークなどのユーロを導入していない国がある。
その理由は

(1)ヨーロッパの大国の発言力が大きいユーロを導入することにより、国家主権が脅かされるという不安
(2)自国の通貨が安定していて、わざわざユーロに切り替えるメリットがない


だそうである。
しかし昨年の世界的金融不況によりデンマークでは倒産が半年で倍以上に増えた。

不況が深刻化したのは、デンマーク金利が急上昇したことも一因となっています。
金融危機で、経済規模の小さいデンマークの通貨クローネを売って、ユーロなどに投資する動きが強まりました。デンマーク政府はクローネを守るため、不況にもかかわらず、金利を引き上げなければなりませんでした。


そして今、デンマークではユーロを望む声が強くなっているそうだ。
何故ならユーロは安定しているから、もしユーロを導入していたのならば今回のように為替を守るために金利を上げなくて済んだからだ。


……この解説は私のユーロと金利に対する認識と真逆である。
私は今回の金融不況はユーロの欠点をさらけ出したと認識していたからだ。


そもそも景気を上昇させるためには、国ごとには適切な金融政策を行う必要がある。
資金が不足して経済が冷えているのならば金利を低く抑え、加熱しているのならば金利を上げる。
しかしEUはユーロを導入することで自国に最適な金利を自由に設定できなくなった。


だからユーロの金利が有利に働き好況を満喫するスペインと、不利に働いて深刻な失業を生むドイツやフランスなどと明暗が分かれてしまう。
つまりユーロの導入とは、自立的な金融政策を放棄し、自国の未来を運任せのバクチに委ねるような行為なのである。
そして世界不況の今、迅速な金融政策で対応すべき時にユーロ導入国は足枷をはめられて傷口を大きく広げている真っ最中である。
ユーロを導入した国とは、たとえるなら安全装置を捨てた原発である。
一度経済が暴走すれば、もはやそれを自力で止める手段がない。


以上が私のユーロに対する認識である。


そもそもデンマークの失敗は深刻な不況期にも関わらず為替の安定を優先させて金利を上昇させたという致命的な金融政策のミスにある。
ユーロに加入していたか否かは問題ではないと思われる。


金利の管理よりも為替の安定を望むのが間違いなのであり、為替の安定したユーロを選択しても問題は解決しない。
反省すべきは金融政策に失敗したことであり、ユーロを選択しなかったことではない。
ユーロを導入せずともしっかり金融政策をしていればいいのであり、金融政策を放棄してユーロが偶然自分たちの都合よく働いてくれるのを待つのでは自立した国家とはいえない。
その意味でユーロの導入とはまさに国家の主権を放棄するに等しい行為なのである。


そもそもユーロで為替が安定していると経済が良くなるという根拠が分からない。
その一番大事なところを説明してくれないと、説得力がない。
視聴者として想定してる相手が高校生だから 浅い話で済ませていいとでも考えているのだろうか?