現在の中国経済はバブルなのか?

世界不況だというのに、中国経済は好調だ。
上海のA株指数は昨年の11月から60%も上昇し、住宅販売数は昨年の間で85%も増えている。
これを受けて、中国経済はバブルに突入したという見方をする人もいる。


しかし、エコノミスト誌(The Economist October 10th 2009 P75)によると、中国経済はまだバブルではないそうだ。
株価、住宅価格、投資効率についてそれがバブル的か否かを以下のように検証している。


まず株価が暴騰しているかについては簡単な数字の比較をする。
A株指数は2006–07年の収益率70倍に比べて、現在はまだ24倍に過ぎない。
だから、この程度ではまだまだバブルではないと結論づける。


次に住宅価格はバブルで第二のサブプライムローンを生むのかについては長めに解説をしている。
まず住宅価格が高いのは都市部だけで、昨年は国全体で住宅価格はわずか2%しか増えていない点が指摘される。
さらに住宅所有者は住宅市場が民営化された十年前に国の補助を受けて数分の一しか住宅価格を払っていないこともあるので、見かけの数字通りの価格を鵜呑みにはできないとする。


更に中国人は住宅ローンには依存していないことが重要だと強調する。
中産階級の四分の一程度しか住宅ローンを利用しておらず、利用していたとしても住宅価格に占めるローンの割合はアメリカ人が76%なのに対して、中国人は46%しかない。だから住宅価格の急な落ち込みに対しても先のアメリカのように大騒ぎすることがない。
それに中国で住宅を購入する際は、頭金に価格の20%を支払わないといけない。投資目的での購入なら更に高い40%の頭金が必要になる。だから住宅投資をするにはかなりの量の現金を用意しないといけないので、過剰投資にブレーキがかかるわけだ。


また中国は財政刺激の効果が薄まった場合に備えて、住宅建設に関わる需要で国の経済を支えるつもりなのだと解説する。
建設は雇用を生み、民間投資を活発にし、新しい住宅に必要な家具や家電製品も売れる。
事実最近は建設が増えて、民間投資が昨年の8月から30%も増加している。昨年12月の成長率の2倍にもなる数字だ。


最期に、昨今の中国に対する限度を超えた過剰投資が資本の収益を縮小させ、成長が鈍化するという指摘にも答えている。
まず生産を1生み出すために必要な投資を意味する限界資本係数、IOCR(前回までに紹介した必要投資率と同じもの)はここ30年低い数値を示している。
つまりこれは投資が効率よく生産に回されていることを意味し、中国経済が過剰な投資にさらされているとは言えない状況にあるとする。


確かに今年は投資が急増している一方で景気後退で成長率が下がっているのでIOCRは急上昇するが、それを言うならGDPが下降しているアメリカのIOCRは無限大になる。
不景気の年のIOCRだけを取り出しても無意味な数値を示すというわけだ。


以上のように現在の中国の好景気には不気味なくらいに死角が見えない。
ただ問題があるとすれば、もし中国が将来のバブルを防ぐために金利を高くしたいと望んでも、アメリカの金利は当分の間低いままなので中国は金利を上げることができないということだろう。
何故なら固定相場制に近い制度を採用している中国では、中国の金利アメリカの金利に連動して動く必要があり、自由な金融政策ができないからである。
これはマクロ経済学の基本的な法則の帰結なのだが、その解説はまた後日に行いたい。


この問題は自国の命運を他国の中央銀行に預けているのと同じことなので、自立した大国としては面白くない話である。
いずれ中国は人民元を変動為替にしないといけないだろう。
前回までの人民元は過小評価されていないので切り上げの必要はないという考えと矛盾していると思う人もいるかもしれない。

私自身が何を最良なのか結論付けていない状況なので、考察過程で矛盾した結果が次々出てくるのはご容赦いただきたい。
だが長期的には、いずれ必ず変動為替制度を採用することになるのは確実なことである。


【追記】
今回紹介した記事が日本語に訳されているのを見つけた。
以下を読みさえすれば私のつたない要約を見る必要はないのである。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1928